アジア人女性で初ノーベル文学賞!韓江さんの経歴や作品についてまとめ

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毎年発表されるノーベル賞。10月10日には、ノーベル文学賞の受賞者が発表されました。

今年はなんとアジア人女性で初のノーベル文学賞作家が誕生!その方のお名前は、韓江(ハンガン)さん。日本ではあまり馴染みのない彼女について経歴や作品などについて調べてまとめてみましたので、ご覧下さい。

基本プロフィール

名前:한강 (漢字:韓江 発音:ハン・ガン 英語表記:Han Kang )

生年月日:1970年11月27日

出身地:韓国光州広域市

大学:延世(ヨンセ)大学国語国文学科

職業:小説家(父の한승원:韓勝源も小説家)兼 ソウル芸術大学の文芸創作科教授

家族構成:夫、息子

代表作:「菜食主義者」 「別れを告げない」

スタートは詩人

小説家として活動されている韓江さんですが、一番最初に文芸誌に載ったのは詩だったようです。大学卒業後に出版社に勤めている間の1993年発行の文芸誌「文学と社会」冬号に「ソウルの冬」など詩5編を発表し当選されました。そしてその翌年1994年に、ソウル新聞の新春文芸で「赤い碇」が入選したことで、小説家としての第一歩を踏み出されました

ちなみに、2013年には「引き出しに夕方をしまっておいた」という詩集を発表されています。この詩集は1992年から2013年の間に韓江さんが書きためていた詩の中から選んだ60編で作られています。韓江さんの20年余の時間がこの1冊に詰め込まれています。

同詩集は2022年に日本語訳が発売されており、それに際して韓江さんは以下のようなメッセージを寄せてくださっています。

アンニョンハセヨ。
『引き出しに夕方をしまっておいた』が日本で出版されることを心より嬉しく思います。
1992年から2013年までに書いた詩の中から60篇を選んだこの詩集は、20余年の時間が込められていて、私には薄く感じられない詩集です。
雑誌に発表した作品もいくつかありますが、ほとんどは発表を念頭におかずに書いてきた詩で、これまで出した本(作品)の中でもっとも個人的なものでもあります。
優しくあたたかい、きむ ふなさん
私の好きな詩集『ただひとつの雪片』の詩人でもいらっしゃる斎藤真理子さん
金承福代表をはじめとするクオン出版社の皆さまに感謝いたします。
そして、この詩集と出会ってくださる読者の方々に感謝と喜びのあいさつをいたします。

『引き出しに夕方をしまっておいた』特設ページ – CUON より

この詩集についてはこちらのリンクから11ページほど試し読みをすることができます。興味のある方は、読んでみて下さい。引き出しに夕方をしまっておいた (tameshiyo.me)

また、同詩集をなんとご本人が朗読されている音声がYoutubeにあげられています。韓国語なので内容はわからないのですが、低めの落ち着いた声で、ゆっくりと朗読される詩を聴くことができます。

「電化の暮らしにおじゃまします篇」B (youtube.com)

代表作の一覧

1995年から現在にいたるまで、割とコンスタントに小説を発表されていますが、日本語訳が出ている作品は残念ながら限られています。今回は、日本語で読むことができる韓江さんの代表作についていくつかまとめてみたいと思います。

○菜食主義者

韓国では2007年に発表され、日本では2011年に訳本が発売されています。

あらすじ

 可もなく不可もない暮らしをしていた専業主婦が、ある日突然肉を食べなくなる。いまの世の中、ベジタリアンはそれほど珍しくないが、彼女の場合、なんらかの主張や、誰かの影響があってそうなったわけではない。自分が見た、気味の悪い夢を理由にするだけ。最初は肉を食べないというだけだったが、夫との関係もどんどんコミュニケーション不全に落ち込んでいく。
 もともとは食べることが好きだった妻が日曜日に作ってくれていた肉料理を、夫は回想する。そのおいしそうなこと! 楽しみを奪われ、欲求不満に陥った夫は、妻の実家に連絡する。家族の集まりが計画されるが、その際に決定的な悲劇が起こる……。

ハン・ガン「菜食主義者」書評 肉を食べず、手の届かない世界へ|好書好日 (asahi.com)の松永氏の書評より一部抜粋

ちなみに、その訳本では「菜食主義者」以外にも2作が収録されています。

ごく平凡な女だったはずの妻・ヨンヘが、ある日突然、肉食を拒否し、日に日にやせ細っていく姿を見つめる夫(「菜食主義者」)、妻の妹・ヨンヘを芸術的・性的対象として狂おしいほど求め、あるイメージの虜となってゆく姉の夫(「蒙古斑」)、変わり果てた妹、家を去った夫、幼い息子……脆くも崩れ始めた日常の中で、もがきながら進もうとする姉・インへ(「木の花火」)―3人の目を通して語られる連作小説集

また、韓江さんは、この作品でイギリスの国際ブッカー賞を受賞されています。

※同賞は、その年に出版された英語で書かれた最も優れた長編小説に与えられる。

○少年が来る

韓国では2014年に発表され、日本では2016年に訳本が発売されています。

作品紹介・あらすじ

1980 年5月18 日、韓国全羅南道の光州を中心として起きた民主化抗争、光州事件。戒厳軍の武力鎮圧によって5月27日に終息するまでに、夥しい数の活動家や学生や市民が犠牲になった。抗争で命を落とした者がその時何を想い、生存者や家族は事件後どんな生を余儀なくされたのか。その一人一人の生を深く見つめ描き出すことで、「韓国の地方で起きた過去の話」ではなく、時間や地域を越えた鎮魂の物語となっている。

※光州事件とは、戒厳令に抗議する学生や市民によるデモが起こり、それを鎮圧すべく投入された軍によって多数の市民が射殺されてしまった事件。

○すべての、白いものたちの

韓国では2016年に発表され、日本では2018年に訳本が発売されています。

あらすじ

 人里離れた家で、女は一人で子を産む。助けを呼ぶこともできず、「しなないでおねがい」という祈りも虚しく、やがて娘は息を引き取る。真っ白な産着は、そのまま白装束となる。
 今や現代韓国文学を代表する存在であるハン・ガンは、そうした不在の物語のただ中で育った。もし姉が生きていたら、私はこの世にいなかったのだろうか。そして彼女は自分の魂と体を明け渡して、姉をこの世に呼び込む。

「すべての、白いものたちの」 死者につながるものを集めて|好書好日 (asahi.com)の都甲氏の書評から一部抜粋

○別れを告げない

韓国では2021年に発表され、日本では2024年に訳本が発売されています。

あらすじ

 作家のキョンハは、虐殺に関する小説を執筆中に、何かを暗示するような悪夢を見るようになる。ドキュメンタリー映画作家だった友人のインソンに相談し、短編映画の制作を約束した。
済州島出身のインソンは10代の頃、毎晩悪夢にうなされる母の姿に憎しみを募らせたが、済州島4・3事件を生き延びた事実を母から聞き、憎しみは消えていった。後にインソンは島を出て働くが、認知症が進む母の介護のため島に戻り、看病の末に看取った。キョンハと映画制作の約束をしたのは葬儀の時だ。それから4年が過ぎても制作は進まず、私生活では家族や職を失い、遺書も書いていたキョンハのもとへ、インソンから「すぐ来て」とメールが届く。病院で激痛に耐えて治療を受けていたインソンはキョンハに、済州島の家に行って鳥を助けてと頼む。大雪の中、辿りついた家に幻のように現れたインソン。キョンハは彼女が4年間ここで何をしていたかを知る。インソンの母が命ある限り追い求めた真実への情熱も……

韓国では、発売後1ヶ月で10万部を売り上げ、フランスのメディシス賞、エミール・ギメ アジア文学賞も受賞した作品です。

ノーベル文学賞受賞の理由

ノーベル賞の選考委員会は選考理由について以下のように述べています。

「ハン・ガン氏の力強く詩的な散文体の文章は歴史的な心の傷と向き合いつつ、人間のもろさをあらわにしている。彼女はすべての作品を通して、心と体や、生と死の関係についてユニークな意識を持っていてそれゆえに、彼女の詩的で実験的な文体は現代の散文文学における革新的存在といえる」

これまでに紹介してきた作品を見てみても、この選考理由はうなずけるなと感じられますね。

また、韓江さん自身は、ノーベル受賞についての会見は開かない方向で考えておられるとのことです。その理由は、ロシアによるウクライナ侵攻やパレスチナ自治区ガザ地区の戦闘で「毎日多くの死があるのに、何が楽しくて記者会見をするのか」と思っておられるから。このため、父である勝源さんが代わりに取材に応じることにしたと明かされています。

今回は韓江さんの経歴と主な作品についてまとめてみました。今回のノーベル賞をきっかけに知られた方、気になった方は、ぜひ読んでみて下さい。

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